高杉初子(たかすぎ はつこ)さんにお会いするたびに元気が出ます。77歳とは思えない、若々しい笑顔がとても印象的です。
日本舞踊は子供のころ少し習ったこともあり、一生の憧れでした。
「幼い頃、近所の方に日本舞踊らしきものを教わりました。踊りは傘を使った野崎小唄でした。それがとても好きだったので、いつか傘を使ってちゃんと踊ってみたいとずっと思っていたのです。
職場やサークルなど日本舞踊を始める機会はたくさんありましたが、ちゃんと習いたいなと思って教室を探すのには70歳になるまでかかりました(笑)。
家元のお稽古のおかげで、自分の心情や人の姿についてより深く考えるようになり、踊りもしやすくなりました。そして、家元と先輩の踊りを拝見するたびに、踊り手が醸し出す雰囲気に感動し、日本舞踊の素晴らしさを再認識できました。
まずはお稽古を体験しようと思い、NHK文化センターが提供している日本舞踊一日体験に参加することにしました。そこの英御流瑞花(はなぶさごりゅう みずか)先生がたまたま私の知り合いで、誘ってくださったんです。
最初はみんなを知らなかったし、何をすればいいかもわからなくて緊張しました。でも、とても暖かく歓迎してもらったのでほどなく馴染むことができ、通うことを決めました。もう7年前の話です。ご縁があって、私にもやっと踊りができる時間が巡ってきたと思うととてもうれしかったです。」

その嬉しい気持ちは高杉さんの踊りににじみ出ています。
「自分で歌うのが大好きだし、明るい踊りが私に合っていると思うので、主に民謡をお稽古しています。」
「私に合った踊り」を教えてもらえるのは、家元 英御流寿光(はなぶさごりゅう ひさてる)先生のお稽古に通い始めてから知った新たな喜びです。
「NHK教室は団体稽古で、みんなと一緒に踊るのがとても楽しいです。
でも、7年前に日本舞踊を始めてからたくさんの舞台を拝見してきて、特に英御流家元の古典踊りは素晴らしく、心を動かされました。自分ももっとがんばりたいと思うようになり、2年前の舞始めのときに家元に声をかけていただいたのを機会に、団体稽古にあわせて家元のお稽古にも通い始めました。
その家元のお稽古は本当に素晴らしいです。基礎から丁寧に教えてくださるので、とてもわかりやすいです。「なすとかぼちゃ」や「郡上節」など、いつも私に合った面白い演目を選んでくださるのも、とてもありがたいですね。」
家元のお稽古に通い始めてから、踊りがわかりやすくなっただけではなく高杉さんの考えも変わったそうです。
「家元がよくおっしゃるのです。踊りは綺麗な所作だけではなく、何かを伝えることが大事です。そのために、普段からでも周りをよく観察しなさいと。
そう言われて、自分が周りをあまり意識して見ていないことに気が付いてしまったんです。あるとき、花見をしたと家元にお話したら、どんな人がいたの?何をやっていたの?と訊かれたのです。そこで、自分が周囲をよく見ていない、よく覚えていないと実感しました。その点、家元はお酒が飲めないのに酔った振りがとてもリアルです。周りを細く観察していることをよくわかりますね。
家元のお稽古のおかげで、自分の心情や人の姿についてより深く考えるようになり、踊りもしやすくなりました。そして、家元と先輩の踊りを拝見するたびに、踊り手が醸し出す雰囲気に感動し、日本舞踊の素晴らしさを再認識できました。」
こうした深い発見をした一方で、高杉さんはこれから踊りの楽しさを何より大事にしたいと考えています。
「もう77歳だもん(笑)。だから、とにかく楽しい日々を過ごしたいです。もちろん向上も目指しているので、基礎をしっかりと身につけてお稽古をがんばりたいと思います。そして、好きな歌をたくさん踊ってみたいです。

70歳で日本舞踊を始めた私は、英御流に出会えたことを本当に感謝しています。先生や先輩方に色々と教えてもらってとても勉強になります。そして、NHK教室の雰囲気も家元のお稽古の雰囲気もとても優しく、暖かいので通いやすいです。踊りはもちろん、教室の仲間と色々な話で盛り上がったり遊びに行ったりもします。うん、とにかく楽しいです。」