前回の記事では、日本舞踊の三つの魅力についてお話ししましたね。覚えていますか?
一つは、たくさんのストーリーがあることでした。
二つ目は、その物語に出てくる様々なキャラクター・役になれることでした。
三つ目は、それぞれのキャラクターをわかりやすく演じるためにたくさんの動きが身につけられるということでした。
今回は残りの三つの魅力を紹介したいと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
では、四つ目の魅力とは?
義太夫、端唄、演歌、民謡、清元、ポップス・・・どんなジャンルの音楽でも踊れます。
日本舞踊といえば、和楽器を使った古い曲のイメージが強いと思います。実際に、古典(歌舞伎舞踊)は清元(きよもと)や浄瑠璃(じょうるり)、長唄(長唄)など歌舞伎や文楽でよく聞く音楽がメインです。慣れていない方には、言葉が聞き取りづらいかもしれませんが、雰囲気だけでも楽しめるものが多いと思います。
古典を専門とする日本舞踊家の中には、伝統的な音楽ジャンルではなければ日本舞踊ではないと言う方もいます。しかし、私たち英御流は違う意見です。日本舞踊は音ではなくストーリー性や特徴的な動きによって成り立っているので、どのような音楽を使っても日本舞踊と言えると考えています。芸者たちが使う端唄(はうた)から演歌やポップス、民謡までどんな音楽でも制限なく使えるのです。
唯一の条件は、ある程度ストーリー性があることです。ストーリー性のない曲は使えないと言うわけではありませんが、自分でゼロから物語を考えないといけないので、振り付けがかなり大変です。とはいえ、うちの家元もまったく歌詞のないドラマ曲に振りをつけて踊ったことがありますし、無理なわけではありません。
このように、好きな音楽で踊れるのが日本舞踊の魅力の一つです。例えば、私は最近好きなJPOP(湘南乃風の「Pandemic」など)や海外の曲に振りをつけて踊っています。曲を探したり振りをつけたり、またそれに合わせた衣裳を探したりするのも私の最高の楽しみの一つです。
とにかく健康に良い(頭を使う、想像力が湧く、身体を鍛える)
「意外と疲れるのね」と、英御流の無料体験稽古に参加された方はよくびっくりします。
日本舞踊にはゆっくりとしたイメージがあるので、みなさんは少し甘くみているのかもしれませんね(笑)。
ゆっくりとした動きでも、きれいな姿勢を保ったり、腰を入れたり、色気を出したりするために、脇腹やコアーマッスルを常に使います。また、体力を使う激しい、速い踊りもありますし、役作りのために違う体の部位を動かしたりするので、日本舞踊家は身体を鍛えています。
また、振りを覚えたり、役を作ったり、歌の間や歌詞を理解するために、頭も常にフル回転します。そのため、かなり高齢でも物忘れが激しくなった日本舞踊家はほとんどいません(笑)。
身体も頭も使うというと大変そうに聞こえるかもしれませんが、実際はそんなに苦労しません!楽しく体を動かしているうちにいつの間にか筋肉がつくので、運動が大嫌いな私でも続けられているのです(笑)。これは日本舞踊の魅力ではなくて、奇跡だと言っても良いかもしれません。
運命の出会い
さいごに個人的な話になりますが、日本舞踊のもっとも素晴らしい魅力の話をしたいと思います。
ドイツ人の私は大衆演劇に入ろうとして、縁あって英御流に出会い日本舞踊を習いはじめました。そのときの私は、日本舞踊の世界どころか日本の基本的な礼儀さえ知らない状態でしたが、師匠や先輩方は外国人ではなく弟子として、後輩として自然に受け入れてくれたのです。丁寧に教えてもらうお稽古がとにかく面白くて、楽しくて、日本舞踊が大好きになりました。
そして今や英御流の皆さんは私のもう一つの家族のような存在となっています。日本に来て女性一人で仕事や生活をしていくことは簡単ではありませんでした。でも、彼らが私を家族のようにあたたかく見守り、やさしく導いてくれたので心強くいられました。

不思議なご縁を感じます。もう一つの素晴らしい家族に引き合わせてくれた日本舞踊に感謝です。
では、日本舞踊の魅力とは?
さまざまな物語や役、振りや音楽を楽しめること、体も頭も鍛えられること、今まで知らなかった自分が発見できること、そして素晴らしい人々に出会えること。すべてが日本舞踊の本当に素晴らしいところです。
もちろん、何を好むかは人はそれぞれですが、日本舞踊はみなさんが想像しているよりはるかに多様性のある芸能だと思います。最高に楽しく、面白いと胸を張っておすすめしますので、少しでも興味をお持ちの方はぜひ一度体験してみてください!