日本舞踊の基本シリーズ「見ること」

朝花 琉球舞踊 日本舞踊

みなさん、こんにちは!英御流杏奈です。

いつも、日本舞踊の基本シリーズを読んでいただき、ありがとうございます!

今日のテーマは「見ること」です。

「見ること?毎日朝から晩まで色んなことを見たりするよ。見る基本なんていらないよ」

・・・と思うでしょう?

ここで、日本舞踊の重要な秘密を明かしましょう!

日本舞踊のもっとも大事な「作業」は何だと思いますか?

それは見ることです!

日本舞踊はストーリーを語ったり、「人」(役)の感情を表現する芸能ですよね。そのストーリーや感情は、振りだけではなく、目でも伝わるものです。

人間は面白いもので・・・言葉や体で上手に嘘をついていても、目をみて嘘がバレたりしますよね。

例えば、口が笑っても目が笑わない人は、怪しいでしょう?!また、相手が相槌をうっても、目がどこかに行ってしまうと、実際に聞いてないことがすぐに分かります。私の旦那がよくやっているパターンです(笑)。

ちなみに、歌舞伎を三階席から見たことがありますか?舞台がとても遠くても、ミニチュアの役者たちが何をどういうふうに見ているかがはっきり伝わります。不思議ですね。

では、さっそく日本舞踊の「見る」基本を学んでいきましょう。

頭の中で世界を作る

ストーリーや感情を目でわかりやすく伝えるために、何を見るべきかを確認しましょう。

「さくらさくら」を例として挙げましょう。
歌詞を読むと、場所や周りにあるものなど、場面の詳細が見えてきます。

主役はもちろんさくらですね。華やかなピンク色の桜が頭上に美しく咲いています。風が少し吹いているので、あちこちに可愛い花びらがちらちらと木から落ちています。

さくらを「見る」時には、目線が上の方に向いていることは言うまでもないですね。ただそれだけではありません。さくらを実際に見ているように想像しないといけません。なぜかというとさくらを見ている目と舞台の天井を見ている目は全く違うからです。天井を見ている目はただただ上の方をみるのに対して、桜を見てる目は「ピンクの海」や些細な花びらをぼんやりと眺めるものでしょう。

観客に、歌詞に出てくる場面や隠れている気持ちを想像してもらえるように、まずは頭の中に見せたい世界を細かいところまできちんと想像しないといけません。

相手がいるように

背景やものを見るのがとても大事ですが、人(相手)を見ることもとても大事です。

日本舞踊では、恋人、敵、友人、子供など、さまざな「相手」が出てきます。また、相手が実際にいないけど、主人公が他の人を想ったりする演目もたくさんあります。

複数人で踊る場合は他の踊り手が目の前にいますが、他の踊り手がいなくて一人で踊るという場合が多いです。ただ、一人ぼっちで舞台上に立っていても、ストーリーで出てくる「相手」が実際にいるように観客に見せないといきません。

もう一度「さくらさくら」に戻りましょう。最後に「いざやいざやみにゆかん」という言葉がありますね。「一緒に桜を見に行きましょう」と、友達に声をかける場面です。顧客に、声をかけている相手がいることを伝えるために、その人(人たち)は誰なのか、どこにいるかなど、頭の中に想像し、明確に「見ましょう」。

(意味なく)目線を切らない

特に「相手」がいることを見せる時に、目線を意味なく変えたり切ったりすることはよくないです。目線が観客にとってストーリーを分かるための大事なヒントなので、目線を適当に変えることよりお客さんが混乱してしまうのです。

例えば、若い女性が恋人を待っているとします。花道の方を見たりして、自分のドキドキワクワク感を踊りで表現しています。次の瞬間に下手の方に向かって人の手を取るような振りがあります。次は、また下手に向かって誰かにお酒を注ぎます。振りのかたちや順番は正しくても、誰がどこに、あるいは相手が何人いるのか不明なので、これではストーリーがうまく伝えられません。

見てから動く

もちろん、ずっと同じものや同じ人を見るストーリーはありません。次から次へ違うものや別の人を見たり、目線を切ったりする必要があります。

例えば、化粧をしていたら部屋に恋人が現れ、喜びのあまりに手を打ちながら彼の方に走るシーンを想像しましょう。最初は鏡(お扇子や手ぬぐいはよく鏡として利用されてます)を見ます。そのとき、相手が現れます。すぐに手をうって彼の方に走ったら、観客が「えっ、どうしたの?」「何があったの?」と驚いて混乱してしまいますよね。

観客の混乱を防ぐために、「これからは今までと違うことをやるよ」ということを伝えましょう。

もちろん、大きい声を出して「私のダーリングがきたぞ」と客席に叫んではいけませんね。(やってみたら面白いでしょうけど・・・笑)

ではどうすれば・・・?

簡単な方法があります。それは、振りより先に目でストーリーの変化を知らせることです。次の振りに入る前に、まずは、次の「人」や「もの」をちゃんと見ましょう。

上記の例だと、鏡から目を離してまずは「彼」をちゃんと見てから、手を打って相手の方に走るといいです。

胸で見る

今まで、ものや相手をちゃんと目で見ましょうと言いましたが、実は、日本舞踊では目ではなく「胸で見ます」。

心で見るとか、ロマンチックな意味ではないですよ。

「胸で見る」というのは、見る方向に頭を向けて見るのではなく、上半身(胸)を見る方向に向ける事を意味します。

何か・誰かを見る時に、みなさんはどうしますか?

見る対象がある方向に頭を向けますよね。例えば、カフェで隣に座っている人に声をかけられたら、その人の顔を見るために頭を回しますね。それが、普通です。しかし、頭だけを向いてしまうカタチはあまりきれいではないし、相手に対して優しくないです。

では、どうそれば優しくなるのでしょうか?

頭だけでなく、胸を相手のほうに向けましょう。そうすると、やさしい印象を与えられ、色気もでます。

胸で見る 日本舞踊の魅力 基本
左:相手に頭だけを向ける 右:相手に胸を向ける

胸を見る対象に向ける時に気をつけないといけないところがあります。それは、客席にも自分の肩を見せないことです。相手に自分の真正面を見せなくていいので、前の肩を落とし、頭を少し倒すことにより、相手にも客席にも肩を見せることが防げられます。

胸で見るのは、日常生活でも色気が出せ、相手に優しい印象を与えるための素敵な方法ですよ。

ボーナス:悩みを見せないで!

最後に、特に本番の時に大事になってくる注意点を紹介したいと思います。

それは、目で考えや失敗を伝えてしまうことです。「次の振りは何だったっけ?」「やだ〜、失敗しちゃった」など、踊りながらいろんなことを考えたりしますね。

自分の中で考えているので、不安や迷いが誰にも伝わらないと思うでしょう?!

実は、観客にもバレバレです!

考えている時の目が自分の内へ向いているので、死んでしまうように見えます。ストーリーや感情などが伝わらないいし舞台の客席との距離が遠くなってしまうので、観客を寂しい思いにさせてしまいます。

みなさんはいかがでしょうか?

踊る時に、「物」や「人」をちゃんと見ていますか?お稽古の時に自分の中で世界を描いて、観ている側にぜひ伝えてみてください。

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