みなさん、こんにちは!日本舞踊のちんとんしゃんへようこそ。
さて、前回は古典舞踊についてお話ししましたが、今回は新舞踊についてお話ししたいと思います!
では早速ですが、改めて古典と新舞踊の違いの復習です。
古典と新舞踊は、音楽のジャンルによって変わります。古典は長唄、清元、常磐津や、クラシック音楽等です。そして新舞踊はそれ以外のすべてのものです。
今回も新舞踊の例として、たくさんのものについてお話ししましょう!
端唄「茄子とかぼちゃ」
まず最初は、「茄子とかぼちゃ」と言う端唄です。これは以前お話ししたことがあるので、今回の説明より詳しく見たい方は、「日本舞踊 野菜も踊る?」を見てみて下さい!
さて、端唄は実は古典っぽく、聴くと「これ古典でしょう?」と言う感じがします。古典のものから題材を引っ張ってきているものが多いです。あとは楽器も、三味線や鼓を用いています。ですが、古典と言う位置づけにはされていません。日本舞踊家と言うよりも、芸者さんや舞妓さんの音楽として位置づけられています。
話としては、「茄子とかぼちゃ」は単純です。茄子とかぼちゃが喧嘩をする!
かぼちゃが自分の蔓をどんどん伸ばして茄子の陣地に侵入するので、その結果二人は喧嘩になってしまいます。他にも、夕顔が仲裁役として登場したりもします。そしてやはり、古典っぽく見えますが、端唄なので新舞踊になります。一人の踊り手が登場人物(登場野菜?)の会話や感情を表現していく、とても見所のある踊りです。
今回は少しだけお話ししましたが、詳しく見たい方、知りたい方は「ナスかぼ」と言うエピソードを是非ご覧になってください!けっこう楽しい話になっています。
「江戸風流花」
次もパッと聞くとなんだか「古典かな?」と言う感じのものなのですが、やはり古典ではなく新舞踊です。曲名は「江戸風流花」。新舞踊が流行り始めたころ、日本舞踊家のために作られた曲です。なのである意味、舞踊家さんが使いやすいように作られたんだと思います。
内容は、太鼓持ちがお酒の場の盛り上げ役で色々な芸を披露すると言うもの。その太鼓持ちが見せる芸の一つ、それは隅田川のほとりに住む女性の話でした。
太鼓持ちなので最初の出は男の役で、隅田川のほとりの様子を一回踊ります。そして途中で動きを変え、そこに住む女性に姿を変えます。花に囲まれながら過ごしてゆく様子を踊って楽しむうちに 、障子を開けてみたら外が雪景色になっていて・・・と言う、おもしろい踊りです。
そして衣装ではなく、普通の着物で踊ります。前回習った「素踊り」ですね。
これは家元のお母様が振り付けをしたとても素敵な一作で、そこには蝶々が飛んでいる様子もあったりと、すごく風情のある踊りです。緩やかな動きがあったり、ノリがよくなったりと、様々な動きの中に風情や様子を織り込んで見せています。
曲自体も「本当に新舞踊?」と思うほど新舞踊の感じではなく、とても気軽に見れる踊りの一つです。
浪曲「俵星玄蕃」(忠臣蔵シリーズ)
次もまた古典っぽいものですが、やはり古典ではありません。ここでお話しするのは、浪曲と言うものです。新舞踊寄りの舞台でよく使われます。浪曲は明確な物語があり、台詞があったりする芝居心のある踊りです。
そしてここは家元の十八番が出てきます!何かと言うと、忠臣蔵シリーズの一つの、「俵星玄蕃」!これは三波春夫さんが物語の最初から最後までを全部浪曲で作ったもので、四十七士を影で助けた人物の物語を歌っているものです。
そして、一番かっこいいのは小道具です!なんと、踊りに槍が出てくるんです。すごいですよね。
さて、俵星玄蕃のお話とは、どんなものでしょう。
俵星玄蕃と言う人は、蕎麦屋のふりをしながら吉良に関する情報を集めている赤穂浪士の一人、杉野十平次に槍の使い方を教えています。俵崩しと言う技術です。
そして、ある晩、玄蕃の耳には討ち入りの太鼓の音が入ってきます。「ああ、これは討ち入ったんだ!」と玄蕃は思います。
「これは何とかして俺も助けに行かないといけない」と玄蕃考え、近くまで行きます。そして玄蕃は門前にいた大石に 「助けますよ」と言うんですが、「いや、私達だけでやりますから、ここは引いてください」と言われてしまいます。
でも結局なにかしらやりたい!討ち入りを邪魔しにくるやつがいるかもしれない!
玄蕃は邪魔する者を通さないようにと待ち構えようとします。すると、槍の極意を教えた蕎麦屋の(ふりをしていた)十平次に遭遇します。玄蕃はこの時襟元に書かれた本当の名前を知ることになるのです。
「命惜しむな、名を惜しめ。見事本懐なされよ」と杉野に伝え、その場を離れた玄蕃は吉良の屋敷に行く途中の橋のたもとで仁王立ちをする。
と、そんなお話です。
さて、踊りの方では、まず槍です。ここは俵崩しの技も出てきます。討ち入りのときに吉良は米俵の中に隠れていて、そこから引きずり出されるところで俵崩しの技を使ったと言う話もあります。本当にそうだったのかは分からないのですが、とにかく諸説様々あります。
お芝居っぽい点も沢山あります。夜ずっとお酒を飲んで寝ているところで、太鼓の音が聞こえてきます。討ち入りをした時に鳴る、数人しか打てない山鹿流陣太鼓です。「これを打つのは、大石内蔵助しかいない!」と。
そこから玄蕃は雪の中へ行って、討ち入りの手助けをしていこうとします。踊りでは、その準備をします。肌を脱いで股立をとり、はちまきをして槍を取ります。そこから飛び六方!で、外へ出たら雪が降っているじゃないですか・・・と。
これこそ、浪曲ですね・・・!
演歌「島田のぶんぶん」
今までは端唄や浪曲などと古典っぽいものについてお話ししてきましたが、次は THE 演歌!です。新舞踊と言えば、やっぱり演歌ですよね。99.9% と言っても、過言ではないかもしれません・・・
新舞踊がぐっと伸びてきたのは、本当に演歌に助けられたからだと言えます。色々な人達が普通に耳にしているものが舞踊化され、お客さんも「この曲知ってる、この曲好きだわ」と思って下さるようになりました。観る人も、踊る人も本当に増えました。
さて、THE 演歌と言っても色々あるのですが、今回は一曲選ばせて頂きました。「島田のぶんぶん」と言う曲です。
昔はすごく人気で、本当に流行った曲です。演歌は新しい曲がどんどん出てくるので、今はそうでもないんですが、それでも私が好きな曲です。あとは、踊りは宗家が踊るんですが、振り付けも踊り方もすごく好きなので、今回ぜひ見ていただきたいと思って、選んでみました。
芸者の活動を描くようなお酒の場面など色々あります。本当によく流行った曲なので、今でもカラオケで歌っている方は多いんではないでしょうか。
すごく可愛い曲で、ノリがいいので聞きやすいです。振り付けもすごく素敵で、動きもまあまあ早い!うちの宗家によくお似合いの踊りだな、と思います。
演歌を使った新舞踊は、毎日毎日新しいものも出るので、本当に山ほどあるんです!皆さんも見てみて下さい。
「YOSAKOI 祭り唄」
次は結構派手なものです!よさこい系ですね。よさこいは日本舞踊ではないんですが、新舞踊ではこう言うよさこい系の曲を使って踊ることもあります。
振り付けも、いかにも「新舞踊!」的な動きがあります。踊り手が軽〜く飛んだり。手の動かし方にも凝ってみたり。あはと旗を振ったり、踊り手の間で飛ばしたりもします!ちょっと危険な香りもしますよね。
派手めの演出の踊りだと、いくつかこう言う感じの振り付けがあります。長半纏を羽織って、払ったり。勢いを見せるために無駄に見えるほど動いたりもします。
そして、小道具も自分で作ったりします!家元も自分一人で内職して作った、お手製 DIY フラグがあるんです。そしてそれが結構重い旗なんだそう。そして振るとものすごい音がするんだと・・・
古典も色々ありましたが、新舞踊も本当に色々あります!バリエーションや自由性があるのは、興味が湧きますね。
「胡蝶之夢」
もうひとつは、また全然違う雰囲気のものです。
「YOSAKOI 祭り唄」はかっこいい、旗を振る踊りだったんですが、次は日本からちょっと出発して、中国に行ってみたいと思います!曲は「胡蝶之夢」と言う日本語の曲なんですが、こう言う踊りもできるということで紹介します。
立方は英御流真樹さんなのですが、舞台も全然違いますし、衣装も中国のスタイルです。そしてお扇子が登場するのですが、日本舞踊のものではなく中国の踊りで使われるものです。
実際に見てみると古典と違っていて、お芝居の部分があまり無いんです。こう言う踊りはどちらかと言うと歌に細かな機微があるわけでもなく、物語でもないので、曲に合わせた導線作りや曲線などをきれいに見せることにポイントをおきます。ちょっとダンスっぽい感じですね。
本当にきれいな踊りで、今まで見たものと全く違う雰囲気です。日本舞踊の中にはこう言う中国風の着物自体ないので、こう言った動きは独特に作れますね。袖は色々使うんですが、形が違います。振りもこれに合わせて変わってきます。
お芝居も確かに面白く見せる要素の一つなんですが、形の綺麗さや流れる動き、そう言ったものも舞踊の魅力の一つでもあります。
「PANDEMIC」
でも、まだ一つ謎と言うか、気になるところがあるでしょうか?それは、今回のエピソードでの家元の衣装です。座っている状態だと見てもよくわからないのですが、なんと振り袖なんです。それも、男性の振り袖です。
そう言うのも新舞踊だとアリなんです。そして新舞踊だとアリと言っても、歌舞伎の役によっては中振袖と言って、膝辺りまで長い男の役もあるんです。でも古典ではなかなか使わないような衣装ですね。
新舞踊でもなかなか見れないと思いますが、このアイデアは大衆演劇から頂きました。これを使って、実際英御流でも踊りました!それが、「PANDEMIC」。(まさにパンデミックになってしまいましたが。)
曲は演歌や歌謡曲じゃなく、本当にもうポップスの中のポップスです。内容は日本文化を世界に連鎖させてゆくみたいな、おもしろい歌詞になっています。お寿司やお相撲、芸者などが出てきます。それを日本から世界に発信していこう、みたいな。
このアイデアも大衆演劇から頂きましたので、感謝です。
踊りでも、3人とも踊り手は振り袖です。振りも男になったり、女になったりと、色々です。(家元の役はずっと男性の若旦那でしたが。)
ちょっとお芝居の部分もあったり、激しい動きもあったりしました。色々入れ替わったり、転換もあったりと、他の新舞踊と比べても、全然違いました。
まとめ
新舞踊だと、こう言ったものもあります。曲も様々ですし、衣装も小道具も色々変化させて・・・アイデアさえあれば、新舞踊なら何でもできます。なので結論としては、古典も新舞踊も多様性があってとてもおもしろいです!
今回の新舞踊に関するお話はここまでです。皆さんも、機会があったら色々な踊りを検索して見て下さい。
では、また次回の記事も楽しみにしていて下さい!